【Eichendorfの詩 61】Terzett(三重唱)
【原文】
Hirt
Wenn sich der Sommermorgen still erhebt,
Kein Woelkchen in den blauen Lüften schwebt,
Mit Wonneschauern naht das Licht der Welt,
Dass sich die Aehrenfelder leise neigen,
Da sink ich auf die Knie im stillen Feld,
Und bete, wenn noch alle Stimmen schweigen.
Jaeger
Doch keiner atmet so den Strom von Lüften,
Als wie der Jäger in den grünen Klüften!
Wo euch der Atem schwindelnd schon vergangen,
Hat seine rechte Lust erst angefangen,
Wenn tief das Tal auffunkelt durch die Bäume,
Der Aar sich aufschwingt in die klaren Räume.
Hirt
Und sinkt der Mittag müde auf die Matten,
Rast ich am Baechlein in den kuehlsten Schatten,
Ein leises Flüstern geht in allen Bäumen,
Das Bächlein plaudert wirre wie in Traeumen,
Die Erde säuselt kaum, als ob sie schliefe,
Und mit den Wolken in den stillen Raeumen
Schiff ich still fort zur unbekannten Tiefe.
Jaeger
Und wenn die Tiefe schwül und träumend ruht,
Steh ich am Berg wie auf des Landes Hut,
She fern am Horizont die Wetter steigen,
Und durch die Wipfel, die sich leise neigen,
Rauscht droben schwellend ein gewaltig Lied,
Das ewig frisch mir durch die Seele zieht.
Hirt
Es blitzt von fern, die Heimchen Ständchen bringen,
Und unter Blüten, die im Wind sich rühren,
Die Mädchen plaudernd sitzen vor den Türen;
Da lass ich meine Flöte drein erklingen,
Dass ringsum durch die laue Sommernacht
In Fels und Brust der Widerhall erwacht.
Jaeger
Doch wenn die Täler unten längst schon dunkeln,
Seh ich vom Berge noch die Sonne funkeln,
Der Adler stuerzt sich jauchzend in die Gluten,
Es bricht der Strom mit feuertrunknen Fluten
Durchs enge Steingeklüft wie er sich rette
Zum ew’gen Meer ― ach, wer da Flügel hätte!
Angela
Wenn von den Auen
Die Floete singt,
Aus Waldesrauschen
Das Horn erklingt,
Da steh ich sinnend
Im Morgenlicht―
Wem ich soll folgen,
Ich weiss es nicht.
Doch kehrt ihr beide
Im letzten Strahl
Der Sonne wieder
Zurück ins Tal,
Schaut mir so freudig
Ins Angesicht:
Da weiss ich’s plötzlich―
Doch sag ich’s nicht.
【散文訳】
羊飼い
夏の朝が静かに立ち上がるときには
青い空には、雲一片も浮かんではいない
歓喜に震えながら、光は、世界に近づいて来て
穂の実った畑という畑は、そっとお辞儀をする
と、わたしは静かな畑に膝まづいて
そして、祈る、まだすべての声が沈黙しているのであれば。
狩人
いや、しかし、誰もこのように、空の空気の流れを呼吸してはいない
狩人が緑の峡谷の中で呼吸するようには!
お前たちの呼吸が、目眩をおこしながら、既に去ってしまったそこで
狩人の本当の悦びが、やっと始まったのだ
谷が木々の間を通ってて深くきらきらと輝き放っているならば
アール河は、澄んだ空間の中へと跳躍するのだ。
羊飼い
そして、昼が疲れて茣蓙(ござ)の上に沈み
わたしは、小川のそばで、最も冷たい影の中で憩うのだ
そっと小さな囁きが、すべての木々の中を通って行く
小川が、夢の中でのように、錯乱したお喋りをする
大地はほとんどざわめく音も立てず、恰も眠っているかのようである
そして、雲たちと共に、静かな空間の中で
わたしは、静かに先へと、未知の深みの方へと船で進むのだ
狩人
そして、その深みが不安に、そして夢見て憩ふているならば
わたしは、山のそばに立っているのだ、国の歩哨のように
わたしは、遠く地平線に、雷雨が立ち昇るのを目にし
そして、かすかにお辞儀をしている木々の梢を通じて
その上の方では、力強い歌が膨れ上がって、さやさやと音を立てる
その歌は、わたしの魂の中を貫いて、永遠に新鮮に進行するのだ。
羊飼い
遠くで稲光がする、蟋蟀(こおろぎ)が窓の下で愛するひとのためにセレナーデを運んで来る
そして、風の中に互いに触れ合っている花盛りの下では、
娘達がお喋りをしながら、門という門の前に坐っている
そこで、わたしは、わが笛(フルート)を門の中へと響き渡らせると
周囲では、生温(なまぬる)い夏の夜を通って
岩の中に、胸の中に、反響が目覚めるのだ。
狩人
しかし、谷という谷が、下の方でもうずっと前に暗くなっているならば
わたしは、山から眺めて、まだ太陽が輝いているのを眼にするのだ
鷲が歓喜の声を上げて、灼熱の中へと墜落する
河の流れが、燃えるように陶酔した上げ潮で一挙に迸(ほとばし)り
狭い岩の峡谷を通って、自らを救いながら
永遠の海へと向かう―ああ、それなら翼があったらよいのに!
アンゲーラ
沃野から
笛(フルート)が歌ふと
森のさやけき音の中から
森の笛(ホルン)が鳴り響くと
わたしは感じながら立っている
朝の光の中に―
誰に従って行ったらよいのかを
わたしは知らない。
しかし、あなたたちふたりは
太陽の最後の輝きの中を
再び
谷へと戻り
わたしの顔がこのように歓んでいるのを見る
と、わたしはそれを突然に知るのです―
が、しかし、わたしはそれを言わないのです。
【解釈と鑑賞】
三重唱と題した詩です。羊飼いと狩人と、そして最後に出て来るAngelaという女性との三重唱です。
アール河は、スイスにあるライン河の支流です。アイヒェンドルフは、他の散文の作品を読んでもそうですが、ライン河がよく出て来ますので、この詩人はこの河を愛し、大切に思っているのです。
最後の狩人の詩の4行目にある、wie er sich retteは、wie er sich rettetのtの抜けたものとして解釈し、訳しました。
最後のアンゲーラという女性が何を知るのかというと、その前の連の、誰に付き従ったらよいのかという問いの意味を知るということなのだと思います。
自然の中を渡って行く、遠くまた近くお互いに歌われる、三重唱です。やはり、既にひとつの世界がここにあるという感じが致します。