2013年4月6日土曜日

【Eichendorfの詩 30】Taeuschung (幻惑)


【Eichendorfの詩 30】Taeuschung (幻惑) 

【原文】

Taeuschung

Ich ruhte aus vom Wandern,
Der Mond ging eben auf,
Da sah ich fern im Lande
Der alten Tiber Lauf,
Im Walde lagen Truemmer,
Paläste auf stillen Hoehn
Und Gärten im Mondesschimmer-
O Welschland, wie bist du schön!

Und als die Nacht vergangen,
Die Erde blitzte so weit,
Einen Hirten sah ich hangen
Am Fels in der Einsamkeit.
Den fragt ich ganz geblendet:
>>Komm ich nach Rom noch heut?<<
Er dehnt' sich halbgewendet:
>>Ihr seid nicht recht gescheute!<<
Eine Winzerin lacht' herueber,
Man sah sie vor Weinlaub kaum,
Mir aber ging's Herze ueber-
Es war ja alles nur Traum.


【散文訳】

幻惑

わたしは、旅を終えて、休んでいた
月がまさに上がると
遠くの土地に
ティーバー河の流れを見た
森の中には、瓦礫が横たわっていた
静かな山の高にある数々の宮殿
そして、月光の中にある数々の庭が
ああ、ヴェルシュランド、お前はどんなに美しいことか!

そして、夜が過ぎるとき
大地は、かくも遥かに煌(きら)めいた
わたしは、ひとりの羊飼いが
孤独の内に、岩にぶらさがっているのを見た。
全く眼が眩(くら)んで、羊飼いに、わたしは尋ねる
「わたしは今日中にローマへ行けるだろうか?」
羊飼いは、半分からだをこちらに向けて伸ばしながら、答えた
「お前さんたちは、本当に嫌われているわけではないさ!」
女の葡萄園主が、それを笑ってよこした
葡萄の葉むらの前に彼女をほとんど見ることはなかった
しかし、わたの心臓は溢(あふ)れた
なるほど、全ては単なる夢であった。


【解釈と鑑賞】

ティーバー河も、ヴェルシュランドもイタリアの河と土地の名前です。

これは、アイヒェンドルフの実際に見た夢でしょうか。そうだとしてもよし、そうでないとしてもよし。

第1連は、いつものアイヒェンドルフの世界です。

第2連、これも不思議な世界です。羊飼いが岸壁にぶら下がっていたり。また、その羊飼いとの奇妙な会話も。

女の葡萄園主が、それを笑って、その笑いを話者に送ってよこす。この女葡萄園主の様子が、

葡萄の葉むらの前に彼女をほとんど見ることはなかった

というこの一行は、幾つかの解釈が可能です。

1。この葡萄園主が、葡萄の葉叢とほとんど一体になっているということ
2。この葡萄園主が、葡萄園の仕事をほとんどしないということ
3。文字通りに、この葡萄園主がいたのは、葡萄の葉むらの前にでは、ほとんどなかったということ

この一行の前の

女の葡萄園主が、それを笑ってよこした

という一行と併せて読むと、やはり不思議な、夢幻の感じのする二行になっています。何か現実的な意味というものを喪失している二行と見えます。

これが、アイヒェンドルフの詩の味わいなのです。

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