Im halben Eise(半分の氷の中で):第6週
by Rudolf Alexander Schroeder
【原文】
Blick in die Welt und lerne leben,
Bedraengt Gemuet;
Braucht nur ein Tauwind sich zu heben,
Und alles blueht.
Die Hasel staeubt, am Weidenreise
Glaenzt seidner Glast,
Schneegloeckchen lenzt im halben Eise
Und Seidelbast.
Braucht nur ein Tauwind sich zu heben. -
Verzagt Gemuet,
Blick in die Welt und lerne leben:
Der Winter blueht!
【散文訳】
世界の中を凝(じ)っとよく見て、そして、生きることを学びなさい
こころが、圧迫するならば
春風が立つだけでいいのだ
そうすれば、すべては花咲く
榛(はじばみ)が埃(ほこり)立ち、ヴァイデンライスの花には
絹の輝きが輝き
雪釣鐘草が、半分解けている氷の中で春めいている
そうして、西洋鬼縛りの花が咲いている
一陣の春風が吹くだけでいいのだ
こころが、落胆するならば
世界の中を凝(じ)っとよく見て、そして、生きることを学びなさい
冬は花咲いているのだ
【解釈】
この詩人の名は、ルドルフ・アレクサンダー・シュレーダー。
1878年から1962年までの人生を享受した詩人です。
このひとの名も、日本には知られていない。
世界と訳したdie Weltは、日本語ならば、世間と訳したくなるが、世間ではないのだ。
それは、世界である。
こころが、圧迫するならば、という言い方が特別である。
普通は、こころが圧迫される、何かで悩まされるものだと思うのだが。
こころの他に、このような詩を書く自分自身がいるということを意味している。
春風と訳したドイツ語のTauwindは、そのまま訳せば、氷や雪を溶かす風という意味です。氷や雪が溶けて露を結ばしめる風という意味です。Tauは露。だから、露風。
春風と訳すと、日本の風土に合わせて誤解が生じることを承知で、春風と訳しました。
ドイツ語でTauwindとあるように、それは厳しい冬の象徴である氷雪を溶かす風という意義が最初にあって、それならば、次に、それは春風と呼ばれていいだろうという順序なのです。
ヴァイデンライスがどのような植物なのか、もしおわかりのかたがいたら、ご教示下さい。
Weiden、ヴァイデンとあるので、柳の形をしているのではないかと思う。
埃(ほこり)立つHasel、榛の写真です。この写真を見ると、埃立つといってもよいが、煙立つといってもよいように思います。確かに、そのような花はあると思う。
http://tinyurl.com/4ookvx9
Schneegloeckchen、雪釣鐘草という花は、わたしの勝手なそのままの訳語です。次の画像を見てください。名前の通りです。
http://tinyurl.com/4joo6v4
Seidelbast、西洋鬼縛りという花は、次の画像を見てください。
http://tinyurl.com/4zkce93
冬から春の時期を歌って、冬には春が胚胎している。だから、冬が花咲いていると歌っている詩です。
それが、世界の内側を統べる摂理だと言っています。
生きることは、そのような摂理を知って、厳しい時節に堪えることであると言っています。
春は必ずやってくる。
というと、通俗に過ぎるでしょうか。
この詩のキーワードは、der Tauwind、雪解けの風、春風と、bluehen、花咲くという動詞だと思います。
最後の、冬は花咲く、冬は花咲いているのだという表現は、隠喩ですが、それは、そのまま事実であるかの如くに読むことができます。
題にもなっている、im halben Eise、半分の氷の中での氷は、雪の中でと解してもいい。氷のようになっている雪、氷となっている雪があります。詩の中では、半分解けている氷の中でと訳しました。真冬には100の量、100の高さで積もっていた雪や凍っていた氷が半分になっているということです。
半分の、という表現に実に実感があります。雪国に育ったひとならば、お分かりになるのではないでしょうか。
それでも、この時期、この詩は尚、冬の歌なのです。
0 件のコメント:
コメントを投稿