2011年1月15日土曜日

無題の詩:第4週

無題の詩:第4週

by Alfred Brendel


【原文】

Es fuehlte die Maus
dass jenseits der Maeusewelt
eine andere
hoeheRe
tieFere
inneRe
Wirklichkeit
alles NAgendE
PFeiFendE ..
KAtziGeMAUSiGe
ueberragte
wie ein einziger unermesslicher Kaese
AnBetunGSWueRdiG
GelBliCh
mit SChoenen Loechern
ueber jeden Zweifel eRhABEn


【散文訳】
ねずみは感じたのだ
ねずみの世界の向こうに
何か他の
より高い
より深い
内面的な
現実があって
それが
すべての齧るものを
すべての笛を吹くように鳴き声をたてるものを
猫とねずみの因縁を
凌駕しているということを
それは丁度
唯一の物凄いチーズがあって
それは
崇拝の対象であり
黄色い色をしていて
美しい穴が一杯あいていて
どんな疑問の上にも
超然と聳(そび)えているようなものだ


【解釈】

この詩は、何故か無題です。

詩人は、1931年の生まれです。

このひとの名前をインターネットで検索すると、同じ姓名の音楽家が検索されます。

この詩人は、検索されません。

原文の詩行をご覧になるとおわかりの通り、大文字小文字が入り交じっている言葉があります。

これは、実際には手書きの文字でそのように書かれているのです。それ以外の文字はみな普通のタイピングの印刷文字で、ドイツ語の正書法に則っています。

手書き文字のところは、なにかそのことばの意味そのものを茶化しているように見えます。

より高い
より深い
内面的な

というところを、

よりてけえ
よりふけえ
内面(ねえめん)的な

と訳すとよいかも知れません。

あるいは、

すべての齧るものを
すべての笛を吹くように鳴き声をたてるものを
猫とねずみ因縁を

というところは、

すべてのガリガリと齧るものを
すべてのぴーぴー笛を吹くように五月蝿(うるさ)く鳴き声をたてるものを
猫とねずみのしっちゃかめっちゃかを

といったように訳し、

崇拝の対象であり
黄色い色をしていて
美しい穴が一杯あいていて
どんな疑問の上にも
超然と聳(そび)えているようなものだ

これを、

スーハイの対象であり
キイロい色をしていて
うっつくしい穴が一杯あいていて
どんな疑問の上にも
モッコリと聳(そび)えているようなものだ

とすると、まだその感じが出るかも知れません。

この詩のこころは、ねずみのことを借りて、人間のことを諷したところにあるのだと思います。

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