2015年7月26日日曜日

Um gut zu leben reicht es nicht(善く生きるだけでは足りない):第29週 by Jorge Eduardo Eielson(1924~2006)



Um gut zu leben reicht es nicht(善く生きるだけでは足りない):第29週 by Jorge Eduardo Eielson1924~2006




【原文】

Den Kühlschrank aufzumachen
Und Brathähnchen und  Marmelade
Vorzufinden. Es ist ferner nötig 
Hunger auf Licht zu haben
Und ohne Messer und Gabel
Einen Stern zu verschlingen
Auch wäre es gut
In dieser Situation
Ein gelbes Kleid anzuziehn
Und dem Nachbarn der nicht grüßt
Die Hand zu geben


【散文訳】


冷蔵庫を開けること
そして、鶏の焼いたのとマーマレードが
前の方にあるのを見ること。更にもつと必要なことは
空腹に光を当てること
そして、ナイフとフォークを使はずに
一つの星を飲み込むこと
また実際、この場面では
黄色の衣装を身にまとひ
そして、挨拶しない隣人に
手を差し伸べることことも、善きことかも知れない


【解釈と鑑賞】


この詩人は、ペルーの、従いスペイン語の詩人です。

この詩人のWikipedia:

https://es.wikipedia.org/wiki/Jorge_Eduardo_Eielson


これは、いい詩です。一読、さう思ひました。

難しい言葉はひとつもないけれども。

さうして、題名がいい。これは、日常に生きるわたしたちの実感ではないでせうか。

善をなして生きるだけは、足りない。

では、悪をなせばいいのでせうか?

4行目の、

空腹に光を当てること

と訳したドイツ語は、理屈を立てて他に訳をとりますと、

光に合わせて空腹であること
光の方を向いて空腹であること

と訳すこともできます。

肝心なことは、その次の行で、

そして、ナイフとフォークを使はずに
一つの星を飲み込むこと

とありますので、ここが眼目、ひとつの星を飲み込むことが、空腹に光を当てることであり、光の方を向いて空腹であることなのです。

冷蔵庫を開けて、さて何を食べようかということと、この星を飲み込むといふことまでの飛躍の素晴らしさ。それで、わたしは、いい詩だと思つたのでありませう。わたしがいい詩だと思ふ詩は、さうしてみると、飛躍のある詩だといふことになります。言葉と言葉、行と行との間に。

また実際、この場面では
黄色の衣装を見にまとひ

といふ此の黄色の衣装は、何か神聖なお祭り、それも宗教的な祭祀のときの色であるのでせう。何故ならば、

そして、挨拶しない隣人に
手を差し伸べることことも、善きことかも知れない

と最後にあるからです。

この2行を読みますと、やはり、ペルーはキリスト教であるのでせう。

ただ日常に善く生きるだけでは足りない、このように手をさしのべなければならない。腹の空いたときに、冷蔵庫を開けて、ナイフとフォークを使はずに、従ひ素手で、といふことは原始的に(それならば星も飲み込めるだらう)、ひとつの星を(咀嚼するのではなく)丸ごと飲み込むならば。

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