Pflanzen(植物):第14週
by Ulla Hahn (1946年生まれ)
【原文】
Setzlinge druecken aus Plastikcontainern
ins Erdreich. Vaterlandslose Gesellen. Taufen:
Jeden auf seinen Namen. Gruppen bilden
Bruederschaften und Kolonien.
Boden suchen und Sehnssucht
wandeln in Wurzelwerk.
【散文訳】
木の苗を、プラスチックの容器から取り出して
大地の領域に押入れる。祖国の同胞たち。洗礼を授ける:
各人をそのひとの名前で。集団を形作ること
兄弟の絆と植民地を
地面を求めること、そして、あこがれを
植物の根っこの総体の中で
変化させること
【解釈】
この女性詩人については、次のWikipedisaにアクセスして下さい。
写真が載っています。
http://de.wikipedia.org/wiki/Ulla_Hahn
ドイツの抒情詩人です。
ドイツの文学史では、この詩人の詩は、一般的に、「新しい主観性の叙情詩」に数えられるのだそうです。
この詩も叙情詩なのでしょう。
第2次世界大戦のドイツの混乱の中で歌われた叙情詩ではないかと推測します。
1943年にホロコーストの施設、アウシュヴィッツで消息の途絶えたユダヤ人の女性詩人、Gertrude Kolmer、ゲルトルード・コルマーの代理人となっています。代理人とWikipediaに書いてあるドイツ語は、法律用語ですから、この抒情詩人は、同性の詩人のために告発をし、訴訟を起こして弁護士の役割を演じたと理解することができます。
カトリックの頑迷な土地柄に抗して文学の世界の中へと成長してゆく女性を描いたベストセラー小説、「家の中の夫」(あるいは「家の中の男」とも訳すことができます)を書いています。
これは、男性である夫による抑圧からの解放の物語です。
この小説は全部で3部作だということです。
今までに、抒情詩集を9冊上梓しています。
機会があれば、この詩人の叙情詩を読んでみたいものだと思います。
最後のところ、
地面を求めること、そして、あこがれを
植物の根っこの総体の中で
変化させること
とある詩行の「変化させる」という言葉は、wandelnというドイツ語ですが、これには辞書によれば宗教的な意味があって、宗教用語としては、化体(かたい)する、と訳される言葉です。
化体するとは、(パンと葡萄酒をキリストの肉と血に)化体(かたい)するという意味です。
ですから、あこがれを化体するということと、この宗教的な歴史的な概念を重ねて表しています。
そのこころは、やはり神を求める、救いを求める、平安を求めるというこころではないかと思います。
根っこの総体の中で。
この場合、植物とは何の譬喩でしょうか。
生命溢れる表の、地上の世界でしょうか。
しかし、そうだとして、この詩人のこころは、眼に見えない地下の根の世界にあるということなのでしょう。
そここそが、わたしたちの日常、大切なわたしたちの生きる世界。
まだまだ、思い、思わせるところの多い詩行です。
なるほど、これが叙情であり、叙情詩であるかと思います。
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