Die schlimmen Eheleut(悪しき夫婦):第15週
by Abraham a Sancta Clara(1644-1709)
【原文】
Nicht also kuerren und schorren die Ratzen,
nicht also schreien und gmauzen die Katzen,
nicht also pfeifen und zischen die Schlangen,
nicht also rauschen und prasseln die Flammen,
nicht also scheppern und kleppern die Raetschen,
nicht also plurren und schnurren die Praetschen,
nicht also wueten und heulen die Hund,
nicht also bruellet der Loewen ihr Schlund,
nicht also hauset und brauset das Meer,
nitch also stuermet ein kriegrisches Heer,
nicht also reisset und tobet der Wind,
nicht also jammert ein schreiendes Kind:
Wie zwei wankende, zankende, reissende, beissende,
weinende, greinende, mockende, bockende,
trutzige, schmutzige
Eheleut.
【散文訳】
つまり、そのう、鼠たちが、チュウチュウ鳴いたり、ガリガリしたりするのではなく、
つまり、そのう、猫たちが、叫んだり、ゴロゴロニャアと鳴くのではなく
つまり、そのう、蛇たちが、笛を吹くようにピーピーと鳴いたり、シューシューと音を立てたりするのではなく、
つまり、そのう、火炎が、さわさわとざわめいたり、パチパチと音を立てたりするのではなく、
つまり、そのう、家鼠が、ガタガタ鳴ったり、カタカタと音をたてたりするのではなく、
つまり、そのう、二十日鼠が、プリプリと鳴ったり、ゴロゴロと鳴いたりするのではなく、
つまり、そのう、犬たちが、怒ったり、吠えたりするのではなく、
つまり、そのう、ライオンたちが、喉をゴロゴロと鳴らすのではなく、
つまり、そのう、海が、荒れたり、激しく波立ったりするのではなく、
つまり、そのう、戦時下にある軍隊が、突撃するのではなく、
つまり、そのう、風が、引き裂いたり、荒れ狂ったりするのではなく、
つまり、そのう、泣き叫ぶ子供が悲嘆にくれるのではなく、
つまり、ふたりの、グラグラ揺れ動く、喧嘩をする、引っ掴み合う、噛み合う、泣いている、オイオイ泣く、嘲笑する、サカリがついて発情する、
強情な、汚い、そんな
夫婦
のようにではなく
【解釈】
1行目のschorrenという動詞が辞書にはみつからなかったので、見当をつけて訳しました。
いづれにせよ、最悪の夫婦の姿を風刺しているのです。
悪しき夫婦と訳しましたが、本当は最悪の夫婦と訳すのがよいのかも知れないと思いました。
最悪が状態の夫婦、それが悪しき夫婦。
味なところは、そうではなく、そうではなく、と否定を連ねることで、実は、そうである、そうである、と裏返して言っているところです。
この詩に出てくる動詞は、みな擬音語、擬態語で、これは普通の辞書には載っていないので、インターネットで調べると、この詩そのものが出てくるというばかり。
こうなると、もうわが直観と、わが経験をもとに、ありたけの想像力を駆使して、見当をつけるという以外には、方途はないのであります。
これこそ、苦心の迷訳というべきでありませう。
よくよくご鑑賞いただきたい。
家鼠と訳し、二十日鼠と訳したところは、取り敢えずの言葉をおいただけで、大いに間違っている可能性があります。
ドイツ語のこれらの名詞の形態からいって、何か小さな可愛らしいものを主語に使って、反対にアイロニカルに、そんなちっこいものが斯く斯く云々(かくかくしかじか)のことをするのではなく、というように歌っています。
もし、お分かりの方がいらしたら、お教えください。
この詩人は、その名前からいって、アラブの世界の詩人と思いましたが、そうではなくカトリックの僧侶です。
Abrahamという名前ですが、しかし、その出自をみると、生粋のドイツ人です。
ドイツ語の世界では、有名な御仁のようで、わたしの不勉強を恥じるばかりです。
ドイツ語のWikipediaに肖像画が載っていますので、御覧ください。
http://de.wikipedia.org/wiki/Abraham_a_Sancta_Clara
説教の才に豊かで、優れた説教を数多くしたことが記述されています。
この詩を読むと、HumorとIronieの豊かな方と見受けられます。
ご夫婦でいらっしゃる読者には、これ以上、註釈は不要の詩であると思われますが、如何か。
わたしたちに、この詩から得る慰めがあるとすれば、時代も民族も超えて、夫婦関係というものは不変であるという慰めであろうか、と、こう書くと、少し厳しすぎるかな。
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