Der Schmerz des Wanderers(旅人の苦しみ):第35週 by Giesela Winterling(1963 ~ )
【原文】
Der Schmerz des Wanderers
Ist der Meine. - Ach was,
Komm, süsser Nachtlied Lust!
Bin von Schmerzen Doppelt,
Doppelt müde. Alles Treibens
Leid füllest, stillest du. Und
Bist der Brust Erquickung
Und all dem Elend Friede!
Ach, komm, in den Himmel!
Soll ich mit?
【散文訳】
旅人の苦しみは
わたしの苦しみだ。ああ、だから何だといふのだ
来い、甘い夜の歌の喜びの何ものかよ!
わたしは、二倍苦しみ、
二倍疲れてゐる。全てを追い立てる(衝動の)
悲しみを、お前は満たし、鎮静する。そして
お前は、胸の慰安であり
そして、悲惨のすべてにとつては、平和である!
ああ、来い、天国の中へと!
わたしも一緒に入れといふのか?
【解釈と鑑賞】
この詩人は、ドイツの詩人です。Wikipeidaはありませんでした。
しかし、ヘッセン州の首都ヴィースバーデンの近傍のコストハイムといふ町に住んでゐて、このやうな文学館を開館したとの記事が、土地の新聞に掲載されてをりましたので、ご紹介します。
この文学館の名前は、『マッチ箱』といひます。
わたしは、二倍苦しみ、
二倍疲れてゐる。
とあつて、何故この話者の苦しみと疲れが二倍であるのか、その理由は、次に続く、
全てを追い立てる
悲しみを、お前は満たし、鎮静する。
とあるやうに、この話者も此の旅人と同様に、普通ならば、悲しみがお前を満たすのであるのに対して、逆方向に、お前が悲しみを満たし、加へて鎮静までするからでせう。
使はれてゐる語彙は、Schmerz(苦しみ)、Wanderer(旅人)、Nachtlied(夜の歌)、Lust(喜び)、Treiben(衝動)、Leid(悲しみ)、Brust(胸)、Erquickung(慰安)、Elend(悲惨)、Friede(平和)、Himmel(天国)といふやうな語彙であり、これらは皆、古典的な語彙ばかりです。
それで簡潔な表現で短い詩になつてゐて、しかも何か複雑な事情を感じさせます。その複雑さは、
Ach was,
Komm, süsser Nachtlied Lust!
ああ、だから何だといふのだ
来い、甘い夜の歌の喜びの何ものかよ!
と訳したところにあります。
何度原詩を読み返しても、綴りに誤りはなく、この文字列のままで、この詩人は歌つてゐるのです。
従い、Nachtlied Lustを一語と解し、この文字のひとまとまりを、was(何だ)といふ語に二格として掛けました。
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