2015年6月6日土曜日

【Eichendorfの詩120】 Klage(嘆き)1809



Eichendorfの詩120 Klage(嘆き)1809
  

【原文】

Klage
1809

O könnt ich mich niederlegen
Weit in den tiefsten Wald,
Zu Häupten den guten Degen,
Der noch von den Vätern alt,

Und dürft von allem nichts spüren
In dieser dummen Zeit,
Was sie da unten hantieren,
Von Gott verlassen, zerstreut;

Von fürstlichen Taten und Werken,
Von alter Ehre und Pracht,
Und was die Seele mag stärken,
Verträumend die lange Nacht!

Denn eine Zeit wird kommen,
Da macht der Herr ein End,
Da wird den Falschen genommen
Ihr unechtes Regiment.

Denn wie die Erze vom Hammer,
So wird das lockre Geschlecht
Gehauen sein von Not und Jammer
Zu festem Eisen recht.

Da wird Aurora tagen
Hoch über den Wald hinauf,
Da gibt's was zu singen und schlagen,
Da wacht, ihr Getreuen, auf.



【散文訳】

嘆き
1809


おお、わたしは身を横たへることができれば
遥かに、最も深い森の中へ
数多くの首級のある場所で、佳き剣(つるぎ)を下に置くことができれば
父祖伝来の、古い剣を

そして、この愚かな時代の中で
全てについて何も感知する必要のない其の剣を
父祖たちが、あの下界で、神に見放されて、散りぢりになりながら
取り扱ふてゐる全てについて何も感知する必要のない其の剣を

君侯の、王者の数々の行ひと成果に見放された其の剣を
古い名誉と荘厳に見放された其の剣を
さうして、魂が、夢うつつに時を過ごしながら
この長い夜を強めてくれるもの(剣)を!

といふのは、或る時代が必ずや来るのであり
すると、主は決着をつけて終はりにするのであり
すると、悪い偽善どもから
その到底(とうてい)本当ではない支配が取り上げられるのだから。

といふのは、鉱石が、槌(ハンマー)によつてさうなるやうに
従順な種族は
その苦難と嘆きによつて、打ち込まれ、切り込まれて
硬い鉄に、正(まさ)しく、なるのだから。

すると、そこに、オーロラの日が明けて
高く、森の上へと明けてゆくことになるのだ
すると、そこに、歌い、太鼓を敲(たた)くべきものが生まれ
すると、そこで、お前たちの忠実なる臣下たちが、目覚めるのだ。


【解釈と鑑賞】

この詩の題名に年代が書かれてゐて、この歳は、この詩にあるやうに、何か苦難の、最悪の歳であつたのでありませう。さうして、時代がまた、そのやうな苦難の時代でもあつた。

この詩は此のまま、今の世にも歌はれ通じる詩であるやうに思はれます。

第一連の、

数多くの首級のある場所で、佳き剣(つるぎ)を下に置くことができれば

とある此調子は、誠に凄惨な感じがゐたします。しかし、これがあいヒェンドルフの実感なのでありませう。この戦さの剣を森の中で、自らが挙げた数々の首級のもとで、下に置くとは、その戦ひが終わつたといふことを意味してをりますが、未だ其の時ではないのです。

さうして、そのやうな敵と戦ふ剣は、父祖伝来の剣(つるぎ)である。

となれば、古き佳き時代のドイツの習俗が、精神が、なほざりにされてゐた時代なのでありませう。

第2連も第3連も、すべて此の剣に関係して文法的にも掛かつてゐるのです。それほどに、アイヒェンドルフは、この剣を歌ひたかつた、歌はねばならなかつた。

最後の連の、

お前たちの忠実なる臣下たち

とある此のお前たちとは、その前の連で、従順な種族と呼ばれてゐる種族の者たちといふ意味です。

この従順なと訳したドイツ語のlockといふ形容詞は、狩りの用語です。

狩りの世界で従順なといふ形容詞を冠せられるのは、猟犬でありませう。神の猟犬に、この詩人は其の種族を擬してゐるのです。

第一連にあるやうに、この戦ひは未だ終はつては全然ゐないのです。それ故に、接続法II式で、その最初の一行が始まり、延々と剣についての形容が続くのです。それでけに、この長い形容には、この詩人の思ひが籠つてゐることがわかりませう。



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