2011年12月3日土曜日

Ich dachte ich sterbe so fror ich(死ぬと思った、それほど、身も心も凍えた):第51週


Ich dachte ich sterbe so fror ich(死ぬと思った、それほど、身も心も凍えた):第51週

by Sarah Kirsch (1935年生まれ)


【原文】

Weh mein schneeweisser Traber
Mit den Steinkohlenaugen
Der perlendurchflochtenen Maehne
Den sehr weichen Nustern
Den schoengewaltigen Schatten
Ging durch! Lief
Drei Abende weiter war nicht zu bewegen
Heimzukeren. Nahm das Heu nicht
Wahllos frass er die Spreu

Ich dachte ich sterbe so fror ich.


【散文訳】

可哀想に
わたしの雪の白さの真っ白な馬
石炭の黒さの真っ黒な目をして
真珠で編まれたたてがみをして
とても柔らかい鼻翼をして
美しいほどに力強い影をしていた
走り抜けた!走った
3日3晩 動かなかった
戻って来なかった。干草を食べなかった
仕方なく、藁くずを食べた

わたしが死ぬと思った、それほど、身も心も凍えた


【解釈】
これは、自分の愛馬が死ぬことを悲しんだ詩です。

わたしが死ぬと思った、それほど、身も心も凍えた

という最後の一行は、馬が死んで行くことを我が身のこととして感じたこころを表しています。

それほど好きな馬だった。

その思いがひしひしと伝わって来る詩だと思います。

この詩人のWikipediaです。

http://de.wikipedia.org/wiki/Sarah_Kirsch

このWikipediaを読むと、この詩人は(日本語でいうならば)東ドイツの文芸家協会の理事をつとめましたが、Wolf Biermannを東ドイツから追放したことに抗議した声明を発表したことから、その地位を追われ、その他わたしも実際に見聞きした抑圧を受けました。

今抑圧と書きましたが、その意味は、盗聴、恫喝、恐喝、検閲等々であったことでしょう。

1977年に一人息子と一緒に西ベルリンへ脱出しております。

脱出の中身がどのようなものであったかは記述がありません。

共産党の一党独裁という語るも愚かな政治制度(これをしも制度とはいはむや?制度とは人間の為にー再度言う、為にーあるものだ)の中で書かれたこのような叙情詩の価値を、一層わたしは思うものです。

詩人はそうしているだけで詩人であり、どこにいても、どのような状況下にあっても、それだけで価値ある存在です。





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