2011年12月25日日曜日


無題(雪):第1週 by Yayu

【原文】

Neujahrstag ist heut!
Wer mir heut den Schnee zertritt,
soll willkommen sein!

【散文訳】

新年の日こそ今日
今日雪を踏分け、雪を蹴散らして真っ直ぐに私に会いに来る者こそ
有り難きかな

【解釈と鑑賞】

Yayuという詩人の詩です。

このアルファベットの綴り、この原詩の短さからいって、Yayuとは、俳人横井也有のことであると思われます。

横井也有には、日本語と英語のWikipediaがそれぞれあります。

http://ja.wikipedia.org/wiki/横井也有

http://en.wikipedia.org/wiki/Yokoi_Yayū

たとえドイツ語に翻訳されたという手間がひとつかかっていても、ドイツ語のNeujahrstag、新年の日、場合によっては元旦というこのドイツ語は、詩人の手にかかると誠に新鮮に響きます。

最初の一行は、倒置文で、新しい歳の日という日を強調しています。

そうして、今日がその日なのだという喜び。

その最初の日に、積雪をものともせず、雪を踏み分け、雪を蹴散らして、まっしぐらにやって来る友。

その友こそ有り難い。

わたしが「有り難い」と訳したドイツ語は、willkommen、英語のwelcomeです。

ようこそいらっしゃいましたというこころが、そこにはあります。

さあ、どうぞどうぞ、そのような友を待っていますよ、ということなのでしょう。

雪を踏み分け、雪を蹴散らしと訳したドイツ語は動詞のzertreten一語なのですが、その含意はひとことの日本語には移すことができません。

Zertreten = zer + treten

という構成の語なのですが、前綴のzerは、その後の動詞の動作によって破壊されるという意味を賦与しています。

即ち、treten、踏む事によって雪が破壊され(というと変ですが)、蹴散らされて、雪が雪の体をなすことなくなってしまうという意味です。

何か一心不乱にやってくるという印象がありますので、そのように訳しました。

また、文法的には、2行目にあるmir、わたしにという3格は、関口文法で「関心の3格」と言われている3格です。

なかなか味わい深い3格で、わたしはこういう3格をなかなか使えません。

Wer mir heut den Schnee zertritt

という語の配列を見ますと、mirという3格があることから、この雪は私の雪だ、私のものだ、会心の雪だという詩人のこころも読み取ることができると思います。

東京の新年は、さて、雪が降るやら、友の来るやら。

横井也有の原詩たる一句をご存じの方がいらしたら、お教え下さい。



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