2011年7月23日土曜日

Die neuen Fernen(新しい遠さ):第30週

Die neuen Fernen(新しい遠さ):第30週

by Joachim Ringelnatz (1883 - 1934)


【原文】

In der Stratosphaere,
Links vom Eingag, fuehrt ein Gang
(wenn er nicht verschuettet waere)
sieben Kilometer lang
bis ins Ungfaehre.

Dort erkennt man weit und breit
nichts. Denn dort herrscht Dunkelheit.
Wenn man da die Augen schliesst
und sich langsam selbst erschiesst,
dann erinnert man sich gern
an den deutschen Abendstern.


【散文訳】

成層圏の
入り口の左に、通路が通っている
(もしそれがこぼれ落ちていなければ)
7キロの長さに亘(わた)って
朧(おぼろ)なものの中に入るまで

そこでは、見渡す限り
何もない。というのは、そこでは
暗闇が支配しているからだ。
もしそこで目を閉じて、
そうして、ゆっくりと拳銃で自殺をすると
よろこんで、ドイツの宵の明星を
思い出すのだ。


【解釈】

ドイツ語のWkipediaです。この詩人の写真が載っています。

http://de.wikipedia.org/wiki/Joachim_Ringelnatz

リンゲルナッツという詩人は、日本でいうなら、その貧しい生き方は、山之口貘という詩人に似ているところがあると思います。

この詩の解釈は、むつかしい。

というよりも、そのむつかしさは、この詩にある通りのことを理解することの難しさだ。

第1聯で、それはそうだと思うことにしよう。そういう通路があり、その至るところにボンヤリとして空間があるのだ。

さて、そうだとして、第2聯も、その通りだと思うことにしよう。

さて、そうだとして、そこでは、暗闇が支配しているとしよう。

そうだとして、何故自殺を図らねばならないのか。

何故、自殺をするときに、宵の明星、金星を思い出すのか。
金星が明るい星だから、自殺しようとするその闇に比べて、対照的なものとして、金星を思うといっているのか。

さらにもうひとつ、ドイツの宵の明星といっていて、ドイツのという形容をしていることが、3つめの問いです。

ドイツの土地から眺める金星なのか、ドイツ人がその神話の世界に持っている金星のイメージに沿った金星という意味なのか。

あるいは、この金星をドイツの象徴として歌っているのか。

しかし、こういう詩であるにもかかわらず、詩は暗くありません。

どのような心情が、この詩を書かせたのか。

答えは、この詩の題名にあるのかも知れません。

新しい遠さと訳しましたが、新しい距離と訳すこともできます。

遠さと訳し、距離と訳しても、これらの語の原文、Fernenは、複数形です。

新しい遠さとは何かという問いに答えると、この詩を知ることができるということになります。

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