Raps(ラップミュージック):第20週
by Marcel Beyer (1965年生まれ)
【原文】
Auf einer leeren Landstrasse sitzt du am Mittag hinterm
Steuer, zwei polinische Sender wechseln sich ab, in
dir spricht nichts, du meinst schon bald, du bist ganz
ohne Woerter aufgewachsen, und dann das: Raps,
hart gezeichnet, klare Linie, gestreute, dichte Rapsarbeit,
das Feld laeuft an, das Bild laeuft voll mit Raps, Raps
bis zur Kante, bis zum Haaransatz, randvoll mit Raps,
Rapsauge, Rapskopf, Rapsgeraeusche, kein Presszeug,
keine Margarine, nichts als Raps.
【散文】
ある人通りのない、車も走っていない国道で、君は、お昼に
ハンドルの前にいて、ふたつのポーランド語の放送が交互に聞こえて、
君の中では話すものは何もなく、君はもうじきこう思うのさ、お前は
全く言葉無しに大きくなったんだぜ、そうして、すると、これだ:ラップ!
がっつりラップ印で、くっきりラインに、バッチリ撒(ま)き散らした濃密なラップ仕事、
目の前が滑走し、見るものがラップで一杯に満たされて走っていて、ラップなんだ
隅から隅まで、髪の毛の先まで、目一杯ラップなんだ
ラップ目玉、ラップ頭、ラップ雑音、抑えつけるものじゃ全然なくて、
マーガリンではなくて、ラップ、ただただラップだけなんだ
【解釈】
この詩人のWikipedia(ドイツ語)です。こんな詩人。
http://de.wikipedia.org/wiki/Marcel_Beyer
これは、ラップすることの体験をそのまま詩にした詩だと思います。
冒頭のイントロダクションは、ラップする若者の雰囲気をよく表している。
「ふたつのポーランド語の放送が交互に聞こえて、」というのは、ひとりでに放送が切り替わるように書いているところに、感覚的な表現があると思います。たとえ、実際には、運転席にいる若者が
チャンネルを切り替えているとしても。
「お前は全く言葉無しに大きくなったんだぜ」というところが、ラップの精神、真髄を表していると思います。ラップは、言葉を介さない。もっと直接的なものなのだと歌っているのです。
「バッチリ撒(ま)き散らした濃密なラップ仕事」と訳したところは、普通の仕事をラップでやっつけると、ラップの仕事になるともとれるし、もともとラップが仕事だともとれます。
これは、註釈は不要の詩ではないでしょうか。
最後の、マーガリンではなくて、という言葉の意味は、紛(まが)い物、偽物、二流品という意味ではないという意味だと思います。つまり、バターの代りではない、ラップは本物だと歌っている。
この詩は、そのままドイツ語でラップの歌詞になっているのではないかなと思います。
日本語にも、その調子を写したかったけれども、難しいものでした。
0 件のコメント:
コメントを投稿