Ich liebe mein Vaterland nicht(わたしは祖国を、愛さない):第38週 by Jose Emilio Pacheco(1939~2014)
【原文】
Ich liebe mein Vaterland nicht.
Sein abstrakter Glanz
ist ungreifbar.
Aber ich würde (obwohl es schlecht klingt)
mein Leben geben
für zehn seiner Orte,
für bestimmte Leute,
Häfen, Wälder, Wüsten, Festungen,
für eine zerstörte, graue, monströse Stadt,
für einige Gestalten seiner Geschichte,
für Berge und
- drei oder vier seiner Flüsse.
【散文訳】
わたしは、わたしの祖国を、愛さない。
その抽象的な光輝は
不可解である。
しかし、(もっとも、かう云ふと、拙劣に響くが)
わたしならば、わたしの人生を、与へることだらう
祖国の十の場所のために
特定の人々のために
港といふ港を、森といふ森を、荒野といふ荒野を、要塞といふ要塞を
ある破壊された、灰色の、怪物のやうな都市のために(与へることだらう)
祖国の歴史の幾つかの姿形(すがたかたち)のために(与へることだらう)
山といふ山のために、そして
祖国の三つか四つの川のために(与へることだらう)
【解釈と鑑賞】
この詩人、ホセ・エミリオ・パチェーコは、メキシコ人の随筆家、小説家、詩人です。スペイン語の詩人です。
メキシコの歴史と生活を知らなければ、軽々な解説はできないと思はれる、これは、詩のやうに思ひます。
しかし、何を言ひたいのか、それは十分に伝はつて来きます。
最初の一行があり、二行目で、一行目の理由を述べ、それ以下の行がすべて、祖国と其処に生きる自分を愛することを歌つてゐます。
このやうな詩は、日本の詩人は書くことができないでせう。
吉本隆明が最晩年に、今の若いひとの詩には、自然がないと指摘したことがあります。
この詩には、自然が歌はれてをり、確かに、日本の詩人にはない、詩人としての、祖国に対する愛と叙情があります。
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