2016年3月12日土曜日

第11週:Frauenfunk(ご婦人放送局)by Marie Luise Kaschnitz(1910-1974)


第11週:Frauenfunk(ご婦人放送局)by Marie Luise Kaschnitz1910-1974






【原文】

Frauenfunk


Eines Tages sprech ich im Rundfunk
Gegen Morgen wenn niemand mehr zuhört
Meine gewissen Rezepte

Gießt Milch ins Telefon
Laßt Katzen hecken
In der Geschirr spülmaschine
Zerstampft die Uhren im Waschtrog
Tretet aus euren Schuhen

Würzt den Pfirsich mit Paprika
Und das Beinfleisch mit Honig

Lehrt eure Kinder das Füchsinneneinmaleins
Dreht die Blätter im Garten auf ihre Silberseite
Beredet euch mit dem Kauz

Wenn es Sommer wird zieht euren Pelz an
Trefft die aus den Bergen kommen
Die Dudelsackpfeifer
Tretet aus euren Schuhen

Seid nicht so sicher
Dass es Abend wird
Nicht so sicher
Dass Gott euch liebt.


【散文訳】

ご婦人放送局

ある日、わたしは放送局で話をする
朝方に、誰ももう聴いてゐないときにいつも
わたしのあるレシピのことについて

牛乳を電話の受話器の中に注ぎます
猫たちを盛(さか)らせて子供をつくらせます
食器洗い機の中で
洗濯桶の中で時計たちを搗(つ)き砕きます
自分の靴を脱ぎなさい

桃にパプリカで味付けをしなさい
そして、腿肉(ももにく)には蜂蜜で味付けしなさい

子供達に、雌狐が1x1で何匹といふ掛け算の九九を教へなさい
で、葉っぱの銀色の面に合わせて、葉っぱを廻しなさい
梟(ふくろう)と相談しなさい

夏になつたら、毛皮を着なさい
山の中からやつて来るあの者たちに会ひなさい
バグパイプの演奏者たちに
自分のを脱ぎなさい

そんなに確かだとおもつてはいけない
夕方になるといふことが
そんなに確かだとおもつてはいけない
神があなたたちを愛してゐるなどとは



【解釈と鑑賞】

この詩人は、ドイツの詩人です。




この詩のカレンダーを製作した出版社が敢へて強調する言葉を赤にしたのか、それとも詩人自身が最初から赤にしたのか、いづれにせよ、題名のご婦人からして赤字ですので、それに関した言葉が詩文の中で赤になつてゐると理解することにしませう。さうすると、

1。レシピ
2。猫たち
3。食器
4。洗濯槽
5。子供たち
6。庭
7。毛皮
8。靴
9。愛すること

これらが、ご婦人たち、即ち結婚した世の女性たちに親縁のものたちであるといふことになります。

かうして眺めますと、如何にもそのやうに見えます。

最初の第1連の出だしと連そのもの、それに続く第2連は、いい。さうしていつのまにか引き込まれて行つて、最後の少しばかり深刻な4行の連に逢着する。

この詩人によれば、これも生きるためのレシピであるといふことなのでありませう。

勿論、このレシピは、昼前には放送することはできず、「朝方に、誰ももう聴いてゐないときにいつも」話すべきレシピでなければならない訳です。

かうして考へて参りますと、題名のご婦人放送局とは、家庭にゐるご婦人方のための放送局といふ意味ですから、そのやうに訳する方がよいのかも知れません。あるひは、ご婦人専門の放送局といふ意味ならば、そのままでもよいといふことになります。








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