2011年6月4日土曜日

Das Wort(言葉):第24週

Das Wort(言葉):第24週

by Rose Auslaender (1901 - 1988)


【原文】

“Am Anfang
war das Wort
und das Wort
war bei Gott”

Und Gott gab uns
das Wort
und wir wohnen
im Wort

Und das Wort ist
unser Traum
und der Traum ist
unser Leben


【散文訳】
「初めに
言葉ありき
言葉は
神とともにありき」

そして、神はわたしたちに
言葉を与え給い
わたしたちは
言葉の中にすまいしている

そして、言葉は
わたしたちの夢であり
夢は
わたしたちの人生である


【解釈】

この詩人のWikipediaです。

http://de.wikipedia.org/wiki/Rose_Ausl%C3%A4nder


言葉の本当の意味で、パロディーの詩です。

あるいは、引用に変奏を重ねた詩というべきでしょうか。

第1聯の聖書の言葉を踏まえて、第2聯、第3聯も同じ様式で書かれています。

この詩人はユダヤ人なので、ルーマニアのゲットーに収容されましたが、そこでパウル・ツェランと知り合っています。

過酷な時代を生き延びた(本当にこの言葉通りに)詩人です。

その詩人が、このような単純な詩を書くということ、また書けるという、その意義を考えるべきだと思います。

このひとの名前は、Auslaender、アウスレンダー、外国人というのです。

従い、これが本名だとは思われませんが、本名だとしても、誠に詩人の名前だと思います。

詩人は、外に出ることが、その仕事です。外国人になること。

(勿論、その仕事は、詩人だけがしているのではない。誰でもが無意識に毎日行なっていることです。)

一つの詩行を書くということは、その一行の外に出るということです。

しかし、なんといっても、この詩人の幸福は、このような聖書という古代の古典があることです。

わたくしたちにも、日本の古代と古典のあることが、やはり詩を書く上で、幸せなことなのだと思います。

2 件のコメント:

杉山巡 さんのコメント...

言葉の外の風景が見えれば見えるほど沈黙してしまうのかも知れませんが、そこから言葉を発するのが詩人なのかもしれません。

言葉⇒夢⇒人生、44年前の6月4日に大阪から東京に出てきました。

その記念日にAuslaenderのこの詩が読めたのはプレゼントを貰ったような気分です。

takranke さんのコメント...

杉山さん、

そのようにおっしゃってくださって、誠に嬉しく存じます。