第9週:Die Erfindung der Schere(鋏の発明)by Peter Horst Neumann(1936-2009 )
【原文】
Die Erfindung der Schere
Und wieder
Lag dein Messer
Über meinem,
Wir prüften
Ihre Schärfen
Haut an Haut,
Wir kreuzten
Sie zum aber-
letzten Mal,
Nicht scharf
Genug, zu schneiden
Was uns hält.
【散文訳】
そして、再び
お前のナイフが横たわつてゐた
私のナイフの上に、
私たちは吟味した
二つのナイフの切れ味の鋭さを
肌と肌を合わせて、
私たちは二つのナイフを
最後にもう一度
交差させて、十字形を作つたが、
十分に切れ味鋭くはない
私たちをとらへて持してゐるものを
切断するには。
【解釈と鑑賞】
この詩人は、ドイツの詩人です。
題は、鋏の発明としましたが、その意味は、鋏を発明するといふ意味であることが、詩を読むと判ります。
さて、どんな鋏を発明したのか。
この鋏のそれぞれが、私たちの譬喩だとして、それを交差させて、十字架の形をなすといふのも、また「肌と肌を合わせて」とあるので、これはまたeroticな詩になつてゐます。
さうではなく、「肌と肌を合わせて」が譬喩ではないと考へると、やはりそれはそれで実際の話となり、私たちが肌をあわせることになります。どちらへ転んでもeroticだといふことになります。
しかし、最後の連の、
十分に切れ味鋭くはない
私たちをとらへて持してゐるものを
切断するには。
とあるこの3行は一体何を言つてゐるのでせうか。
ナイフ2本で鋏を構成しても、やはり何かに対してまだ弱いといつてゐる。
「私たちをとらへて持してゐるもの」を、二つのナイフを重ねた交差にある鋏の留め金だと理解をしたとして、さうであれば、今度は、私たちの一本一本のナイフの組み合わせを保持してゐる其の留め金が自己矛盾だといふことになりませうか。
ここから先、どのやうに問題を解決するかは、読者に委ねられてをります。