2016年5月28日土曜日

第22週:Autors schieben(自動車は休日を近づけようとしてゐる)by Hans-Jürgen Heise(1930 - 2013 )

第22週:Autors schieben(自動車は休日を近づけようとしてゐる)by  Hans-Jürgen Heise(1930 - 2013 ))by  Hans-Jürgen Heise(1930 - 2013 )








【原文】

Autos schieben mit ihren Stoßstangen
die Feiertagen vor sich her
Die Landstraße den Schuhen entfernt
beürhrt den Himmel aufs banalste 
            Seilbahnen
Strecken und längen den Tag
Doch der Föhn bleibt Föhn
ein Fiasko der Nerven
                           

【散文訳】

たくさんの自動車が、バンパーで
手前に押して、休日を近づけようとしてゐる
国道は、靴からは遠く
最も陳腐な姿で、天に触れてゐる
          たくさんのロープウエイは
日を延ばし、そして、日長くしてゐる
しかし、フェーンはフェーンのままで変わらず
神経のなせる失敗作なのだ


【解釈と鑑賞】

この詩人は、ドイツの詩人です。

ドイツ語のWikiです:

これは、休日に車で出かけて、渋滞する光景を描いたのでせう。

自動車やロープウエイが複数形になつてゐるので、ドイツの国のいたるところで一斉にさうだといふ感じがします。それで敢へて、たくさんのといふ言葉を表に出しました。

国道は、靴からは遠く
最も陳腐な姿で、天に触れてゐる

とあるのは、一本道の国道が地平線の向かうまで走つてゐて、そこまで自動車が列をなしてゐるのです。「靴からは遠く」とあるのは、歩いてゐる人は誰もゐない、皆自動車に頼るばかりだといふ意味です。あるいは、この言ひ方をすることで、歩いた方が早いのに、馬鹿ぢやないのかといふ心もあるかも知れません。それが「最も陳腐な姿で」といふ表現になつてゐるのでせう。

それ故に、最後の連では、

しかし、フェーンはフェーンのままで変わらず
神経のなせる失敗作なのだ

とある理由なのでせう。

フェーンは、フェーン現象のフェーンで、ヨーロッパならば、アルプスから吹き降ろす乾燥した南風のことです。この自動車の待ち行列が、暖かい南風のフェーンにあたつて、車内は尚暑くてやりきれないといふ意味なのか、またいらいらするばかりの神経の露はになる、そんな失敗劇だと、この行列をいふのか、あるいはそんな神経の作りだした行列だといふのか、最後の打ちやるやうな、放擲するやうな名詞句は、やつてられないといふ気持ちがよく表はれてゐます。






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